35歳、10年ぶりのコード。AIと作った初めてのアプリ
プログラミングは大学まで。そう割り切っていた沢井が、2026年春、AIコーディングツールと出会った。エラーに怯えず、質問しながら進める開発は、10年前とまるで違っていた。
大学時代、情報工学を専攻していた沢井は、卒業後に営業職へ進んだ。「コードを書くのは好きだったけど、自分には向いていないと思った」。そう振り返る彼は、就職してから一度もIDEを開いていなかった。10年が経ち、プログラミングは「いつか、もう一度」のリストに残ったまま、日常から遠ざかっていった。
転機は2026年3月。SNSで目にした「AIコーディングアシスタントで初心者が1ヶ月でアプリを作った」という投稿だった。「10年前に挫折した自分でも、今ならできるかもしれない」。その日の夜、沢井は対話型のAIコーディングツールをインストールした。
10年ぶりのコード、AIと二人三脚で
最初のプロジェクトは、シンプルな家計簿アプリ。紙のノートで続けていた家計管理を、自分の手でデジタル化したかった。「エクセルでもいいんですけど、やっぱり自分で作りたかったんです」。
プログラミング言語は、大学時代に少し触れたことがあるJavaScriptを選んだ。だが10年のブランクは大きい。環境構築の手順も、ライブラリの使い方も、何一つ覚えていなかった。
そこで彼が頼ったのが、AIコーディングアシスタントだった。「Node.jsで家計簿アプリを作りたい。まず何から始めればいい?」とチャットに打ち込むと、AIは環境構築のコマンドから順番に提示してくれた。ターミナルで実行し、エラーが出たらそのメッセージをそのままAIに貼り付ける。すると原因と解決策が返ってくる。
「ググるより圧倒的に早い。しかも、自分のコード全体を見てくれるから、文脈に合った答えが返ってくるんです」。
最初の1週間は、データ構造の設計とバックエンドのAPI設計に費やした。「月ごとに支出をまとめたい」「カテゴリ別に集計したい」といった要件を自然言語で伝えると、AIは Express.js のルーティングとデータベーススキーマのサンプルコードを生成してくれた。沢井はそれをベースに、自分の必要な機能を追加していった。
「聞きながら書ける」という発見
開発を進める中で、沢井が最も驚いたのはエラーへの向き合い方が変わったことだった。
10年前、大学の課題で詰まったとき、彼はエラーメッセージを前に何時間も固まっていた。「自分の力で解決しなきゃ」という思い込みが強く、質問するのも億劫だった。結果、デバッグが苦痛になり、プログラミングそのものが嫌いになっていった。
2026年のAI開発は違った。エラーが出たら即座にAIに相談する。「このエラーはどういう意味?」「どこを直せばいい?」。対話しながら進めるため、孤独感がない。そして重要なのは、AIの説明を読むことで、自分自身が学んでいるという実感があったことだ。
「最初はAIが書いたコードをそのままコピペしてたんですけど、途中から『なぜこう書くのか』を聞くようになったんです。そうすると、次に似たような問題が出たとき、自分で解決できるようになってた」。
HAIIA の認定資格でも強調されているのは、まさにこの「AIとの協働スキル」だ。AIを単なる道具として使うのではなく、学習のパートナーとして活用することで、技術スキルは加速度的に伸びていく。
最初の「動いた」まで、わずか3週間
3週間後、ローカル環境で動く家計簿アプリのプロトタイプが完成した。支出の入力、月次集計、カテゴリ別のグラフ表示——基本機能はすべて揃っていた。
「画面に自分が入力したデータがリアルタイムで反映されたとき、本当に嬉しかった。10年前には作れなかったものが、今は作れている」。
統計によれば、2026年にはAIコーディングアシスタントを使う開発者の41%が、AIが生成したコードをそのまま使っている。だが沢井のような「学びながら使う」スタイルの開発者も確実に増えている。実際、AIアシスタントを使う開発者は使わない開発者に比べ、プロジェクトの完遂率が126%高いというデータもある。
彼の場合、開発時間の内訳はこうだった:
- 環境構築・初期設計:1週間(約10時間)
- バックエンド実装:1週間(約15時間)
- フロントエンド実装:1週間(約12時間)
合計約37時間。平日の夜と週末を使い、3週間で形にした。「10年前なら、環境構築だけで挫折してたと思います」。
エラーも、AIと一緒なら怖くない
開発が佳境に入った4月下旬、沢井は大きな壁にぶつかった。データベースのトランザクション処理で、同時書き込み時にデータが壊れるバグが発生したのだ。
「ログを見てもさっぱり分からなくて、正直焦りました」。だが彼はすぐにAIに相談した。エラーログとコードの該当箇所を貼り付けると、AIは「競合状態(race condition)が発生している可能性があります」と指摘し、解決策として楽観的ロックの実装例を提示してくれた。
「race condition って単語、大学で聞いた気がする……くらいの記憶でした。でもAIの説明を読んで、『ああ、こういうことか』って腑に落ちた」。
その後、彼はトランザクション処理の基礎を改めて学び直した。AIが提示したコードを理解するために、関連ドキュメントも読み込んだ。AIは答えをくれるが、理解するのは自分自身。その感覚が、彼の学習意欲を再び燃え上がらせた。
このプロセスは、HAIIA の3つの軸で語られる「自己実現」そのものだ。AIは夢を代わりに叶えてくれるわけではない。ただ、夢に向かう道のりを、圧倒的に歩きやすくしてくれる。
アプリ公開へ、35歳の新しいスタート
2026年5月上旬、沢井の家計簿アプリは基本機能がすべて揃った。まだバグはいくつか残っているが、自分自身が毎日使えるレベルには達している。
「次はスマホアプリ版を作りたいんです。React Nativeを使えば、同じロジックを流用できるらしいので」。彼の目には、10年前には見えなかった「続き」が見えている。
開発を通じて得たのは、単なる技術スキルだけではない。「分からないことを恥じなくていい」という感覚だ。AIに何度も質問し、何度も試行錯誤する中で、彼は「完璧でなくても前に進める」ことを学んだ。
実際、2026年の開発者コミュニティでは、「AIと一緒に学ぶ」スタイルが主流になりつつある。ある調査では、AI支援を受けた初心者エンジニアは、従来の3.2倍の速さでスキルを習得しているという結果も出ている。
沢井は現在、同じように「いつかアプリを作りたい」と思っている友人を集めて、週末に小さな勉強会を始めた。テーマは「AIと一緒にゼロから作る、はじめてのアプリ」。参加者は5人。全員がプログラミング初心者か、久しぶりに触る人たちだ。
「自分だけじゃもったいないと思ったんです。AIがあれば、誰でも始められる。仲間と一緒なら、もっと楽しく続けられる」。
35歳の春、沢井は「諦めていた夢」を再び手に取った。それは、彼だけの物語ではない。2026年、AIという道具を手にした無数の人たちが、同じように夢を動かし始めている。
よくある質問
プログラミング初心者でも本当にAIだけでアプリが作れますか?
AIコーディングアシスタントは強力なツールですが、「完全にAI任せ」では難しいのが現実です。ただし、基礎的な概念(変数、関数、条件分岐など)を理解していれば、AIが具体的なコード例や解決策を提示してくれるため、学習曲線は大幅に緩やかになります。沢井のように大学で少し学んだ経験があれば、数週間で実用的なアプリを作ることは十分可能です。
どのAIコーディングツールを使えばいいですか?
2026年5月時点では、対話型AIアシスタント、コード補完型ツール、エージェント型開発環境など、用途に応じて複数の選択肢があります。初心者には、自然言語で質問しながら開発できる対話型ツールがおすすめです。無料プランから始められるサービスも多いので、まずは試してみることが重要です。
仕事をしながらでも続けられますか?
沢井は平日の夜1〜2時間、週末に3〜4時間のペースで開発を進め、3週間でプロトタイプを完成させました。重要なのは「完璧を目指さない」こと。小さく始めて、少しずつ機能を追加していくスタイルなら、仕事と両立しながらでも十分に続けられます。
About Haiia Notes
HAIIA(健全AI教育協会)が運営するメディア。AI で諦めた夢にもう一度火をつけるためのニュース・実践記事・レポートを、毎日お届けしています。