AIが繋いだ、20年越しの絵本 —— 43歳の再挑戦
美大受験の挫折から20年。営業マンとして生きてきた沢井さん(43)が、画像生成AIと出会い、娘に贈る絵本を3ヶ月で完成させた。諦めた夢は、道具が変われば動き出す。
美大受験、不合格。その日から沢井さん(43)は、絵筆を置いた。
営業職として20年。妻と小学4年生の娘との3人暮らし。毎晩の読み聞かせが、唯一「絵」と繋がる時間だった。2026年2月のある夜、娘がページをめくりながら訊いた。「パパも絵本、描けるの?」
沢井さんは笑って誤魔化した。「昔はね」と。でもその夜、スマホで検索した。「絵本 AI 個人 2026」。画面に並んだのは、絵が描けない人でも絵本を完成させたという記事だった。
美大受験、不合格 —— 20年前の諦め
沢井さんは高校時代、美術部で油彩を描いていた。教師からは「才能がある」と言われ、美大進学を目指した。だが受験は不合格。実技試験で、隣の受験生の完成度に圧倒された記憶が今も残っている。
「技術が足りなかった。デッサン力も、色彩感覚も、プロには遠かった」
浪人する経済的余裕はなく、一般大学へ進学。就職後は営業職としてキャリアを積んだ。絵本作家になりたかった夢は、「いつかやりたい」から「無理だ」へと、静かに変わっていった。
娘が生まれてから、絵本の読み聞かせが日課になった。ページをめくるたび、かつて自分が描きたかった世界を思い出す。でも「今さら」という言葉が、いつも心を止めた。
「パパも描けるかな」—— 娘の一言が扉を開けた
2026年2月中旬、同僚との昼食で「最近、画像生成AIで副業してる」という話を聞いた。イラストを描けなくても、文章で指示すれば絵が生成されるという。半信半疑だったが、帰宅後に無料の画像生成AIを試してみた。
プロンプト欄に「森の中の小さな家」と入力。15秒後、画面に現れた風景は、沢井さんの想像を超えていた。
「これなら、俺にもできるかもしれない」
翌週末、対話型AIを使ってストーリーのアイデアを練り始めた。娘が好きな「勇気」をテーマに、森で迷子になった少女が動物たちと出会う物語。AIとの対話は、まるで編集者と企画会議をしているようだった。
「主人公の性格をもっと明確にしたい」「クライマックスはどう盛り上げるべきか」——質問を重ねるたびに、ストーリーの骨格が見えてきた。
対話型AIとの企画会議、画像生成AIとの試行錯誤
2月下旬、プロットが固まった。見開き16ページ、計32ページの絵本。次は画像生成だ。
最初の1枚目「森の入口に立つ少女」を生成するまで、27回のプロンプト修正を重ねた。髪の色、服装、背景の木々の密度——細部を調整するたびに、自分が求める「絵」が明確になっていく感覚があった。
仕事が終わった後の2時間、毎週末の朝。週に平均8時間を絵本制作に充てた。3月中旬には、全32ページ分の画像が揃った。文章は対話型AIで下書きを作り、自分の言葉で書き直した。
技術的な壁にぶつかったとき、HAIIA の認定資格で学んだプロンプトエンジニアリングの知識が役立った。AIを「道具」として使いこなすスキルは、独学だけでは得られなかったと思う。
「できた」の瞬間 —— 製本サービスで形に
4月5日、オンライン製本サービスで10冊、計1万2千円をかけて印刷を発注した。A4サイズ、ハードカバー。1週間後、自宅に届いた小包を開けたとき、手が震えた。
自分の名前が、表紙に印刷されている。
娘に渡したのは、その日の夜だった。「パパが作ったんだよ」と言うと、娘は目を輝かせてページをめくり始めた。「すごい! パパ、これ本物の絵本だよ!」
翌週、地域の図書館に1冊を寄贈した。司書の方は「個人出版の絵本は珍しいですね。大切に置かせていただきます」と言ってくれた。4月20日、図書館の棚に並んだ自分の絵本を見たとき、20年前の「不合格」が消えた気がした。
これから —— 2冊目の企画、仲間との出会い
今、2冊目の構想を練っている。今度は動物が主人公の冒険物語だ。SNSで制作過程を投稿すると、同じようにAIで創作を始めた人たちからコメントが届くようになった。
「私も諦めていた小説を書き始めました」「音楽制作、20年ぶりに再開しました」——彼らの投稿を読むたび、自分だけじゃないと思えた。HAIIA の仲間募集のページで知り合った仲間とは、月に1度オンラインで進捗を共有している。
沢井さんはこう語る。
「諦めたんじゃなくて、道具が足りなかっただけだった。AIは、俺にとって絵筆の代わりだ。大事なのは、何を描きたいか。それさえあれば、何歳からでも始められる」
娘は今、パパの次の絵本を楽しみにしている。沢井さんの夢は、もう止まらない。
HAIIA の3つの軸が掲げる「自己実現」は、こうした一人ひとりの「もう一度」から生まれる。技術は手段であり、動かすのは人の意志だ。
明日、あなたが開くのは、どの「諦めたフォルダ」だろうか。
よくある質問
絵が描けなくてもAIで絵本は作れますか?
はい、可能です。沢井さんのように、画像生成AIを使えば絵を描くスキルがなくても視覚的な作品を制作できます。重要なのは「何を伝えたいか」というストーリーやコンセプトです。プロンプト(AIへの指示文)の書き方を学ぶことで、イメージに近い画像を生成できるようになります。無料の画像生成AIも多数あるため、まずは試してみることをおすすめします。
画像生成AIの費用はどのくらいかかりますか?
無料プランから月額数千円のサブスクリプションまで幅広い選択肢があります。沢井さんのケースでは、画像生成AIの月額プランが約2,000円、製本費用が1万2千円(10冊)でした。初期投資を抑えたい場合は、無料プランで試作し、納得してから有料プランに移行する方法もあります。
完成した絵本を販売することはできますか?
はい、可能です。ただし、使用する画像生成AIの利用規約を必ず確認してください。多くのサービスは商用利用を許可していますが、条件が異なる場合があります。また、オンライン書店での電子書籍販売や、自費出版サービスを使った紙の本の流通も選択肢として広がっています。沢井さんのように、まずは家族や地域に向けて作り、反応を見てから次のステップを考えるのも一つの方法です。
About Haiia Notes
HAIIA(健全AI教育協会)が運営するメディア。AI で諦めた夢にもう一度火をつけるためのニュース・実践記事・レポートを、毎日お届けしています。